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        今年の芥川賞     (平成27年 9月)

 この夏の話題の一つに、お笑い芸人「ピース又吉」として、テレビでお馴染の又吉直樹さんが、著作「火花」で、今年上半期の芥川賞を獲得されました。芥川賞候補作品になったという時点で、すでに60万部が売れているということも話題になり、今や発行部数も200万部を遥かに超えていると聞いています。この発行部数は、お笑い芸人の書いた小説という単に読者の好奇心がもたらす現象ということでは説明できず、書かれている「火花」という作品が持っている魅力にあるのだと思います。

 又吉直樹さんは沖縄県出身の父、鹿児島県奄美生まれの母という両親のもと、大阪で生まれ、大阪で育ちました。活発聡明な二人の姉が居て、その中で、無口な少年として育ったと言います。子供のときから本が好きで、無口ではあるけれど、頭の中ではいつもいろいろと考えている子供であったと、ご本人も言っています。6歳のとき、父の誕生日を漫才で祝おうと計画し、自分がネタを書き、姉二人が漫才をしたようですが、肝心の父には受けなかったようです。とはいえ、これが漫才のネタ書きの最初であったのでしょう。

 高校時代はサッカー部の副主将として活躍し、インターハイに大阪府代表として出場するほどの部活をしてきたという才能も示しています。一方では、東京吉本興業養成所NSCの5期生として入学し、育った大阪ではなく東京で、タレントの何たるかを学んでいます。又吉さんもまた芸人修行の常道である苦労を経験し、最初のコンビは解消、二度目のコンビ名「ピース」で綾部祐二と組み、テレビで活躍し始めました。今はお笑い界の中堅どころという位置にいると言えるのでしょうか。

 作品の「火花」は、お笑い芸人の日常を書いています。まだまだ二流の下で、売れない漫才師の徳永である僕が、相方の山下とコンビを組んで、「スパークス」という名で舞台に立っています。この小説の冒頭では、熱海の花火大会の幕間の余興に、自分たち「スパークス」と一緒に出演する「あほんだら」というコンビが登場します。その「あほんだら」の一人に神谷さんがいて、神谷さんと徳永である僕とのお付き合いのさまざまを、淡々と書き綴っていきます。淡々と綴っているのですが、読者には異常な漫才師の生活が見えてきます。

 異常な漫才師の生活と書きましたが、勿論のこと、芸人の生活が狂っているという意味ではありません。日頃、テレビに出て来て笑いを提供してくれる芸人の生活と、いわゆる一般的な読者の生活との差を強調したかったのです。笑いを職業とする人の笑いに純粋に取り組む姿勢と、笑いが浮かばないときの葛藤を描くこと。そして神谷さんの笑いに取り組んでいる日常を傍で感じ、尊敬し、会話を重ねていきます。ですが、やがて神谷さんの笑いへの行動が思わぬ方向にズレて、徳永自身の考え方との齟齬が生じてくることを書きます。

 「花火」というどこか儚さを感じさせる夏の行事を、作品の初めと終わり取り込んで、彼らの変わっていく生活をトレースしていき、徳永、山下コンビの「スパークス」は、それなりに世の中の評価を受け始めるのですが、相方の山下がコンビ解消を言い出し、山下とでなければ漫才はしないという徳永の決心で、フィナーレ漫才が披露されます。その場面も印象的ですが、やはり神谷さんの往く道です。これがどんな形で進行していくかは、ここでは申上げません。是非とも読んでいただきたいところです。

 又吉直樹さんが、芥川賞受賞の喜びのコメントが文芸春秋の9月特別号に記載されていますが、末尾近くに久し振りに帰省した後、父の痩せぶりに驚き、親父の「こうなったら、もうあかんのぉ」という言葉に戸惑います。そして翌朝、親父に挨拶もしないで発とうとして、親父の部屋の戸の前で、親父の泣く声を聞いたように思います。よく耳を澄ましますと親父は泣いていたのではなくて、テレビでバラエティ番組を観ながら、面白そうに笑っていたようです。

 自分の安易な想定が脆くも崩れ去ること、現実には泣いていたと思った親父が、笑っていたということで、読む私たちには滑稽さを感じさせる結果になっていることを書きます。もう少し精密に書きますと「僕の安易な想定を現実は簡単に越えて行く。そんな現実を、越える表現を目指したい」とあります。なにせ沢山の本を読んでいる又吉直樹さんのこと、芸人を続けながら、書かれるであろうこれからの小説に期待したいですが、上述のように笑いの根源は、思わぬところで弾けてきます。先が楽しみです。                            (応援団子A)


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