今年、メジャー・リーグ１５年目の春を迎えたイチロー選手は、心機一転、ニューヨーク・ヤンキースからマイアミ・マーリンズへ移籍しました。その発表の記者会見は、わざわざ母国日本に帰国して行いました。そして席上、「この度はマーリンズに移籍しましたので、引き続きどうぞよろしく応援をお願いしますとは申し上げません。ただ、応援して下さることに相応しい練習は致します」であったか、「応援していただけるような練習はしてみせます」であったか、まさしくイチロー選手独特の「イチロー節」で、移籍の挨拶を締め括りました。
しかも驚きましたが、フロリダでのスプリングキャンプインの当日のことです。球場入りしたイチロー選手が着ていたＴシャツには、「応援よろしくお願いしますとは申し上げません」と書いてありました。これをテレビ・ニュースで見て、「やはりあの言葉には、かなり拘りがあったのだな」と思うことでした。イチロー選手の茶目っ気を発揮した、しかし、今年の覚悟を込めたキャンプインだと思いますが、少し大げさに言えば、ＭＬＢ在籍１５年にして３０００本安打を放つこと（後１５６本）、生涯安打数をピートローズの持つ記録４２５６本を超えること（後１３４本）という大きな夢をかけている訳ですから、昨シーズンよりも、より多くの出場機会を得、一本でも多く、一秒でも早く、記録に到達したいという気持ちになるのは当然だと思います。
ご本人には一番嫌なことではないかと思うのですが、それは年齢のことです。年齢は既に４１歳、ここまでは誰にも負けないように、鍛えに鍛えた頑健な身体であるとは思うのですが、残念ながら肉体は、加齢には追いつけない弱点を持っています。筋力もさることながら流体視力もそうです。イチロー選手には残された時間は決して多くはありません。冒頭に申し上げたような挨拶をし、Ｔシャツを着て、今シーズンに臨んでいます。そのキャンプ情報も大活躍をしていた時代に比べて、私たちの耳に聞こえて来るものは決して多くはありませんが、時折、テレビに映るイチロー選手の軽やかなランニングや、外野でのフィールディングは変わっておりませんし、今年は加えて例年以上の笑顔があるように思います。
今度入団したマーリンズには、外野手のレギュラー候補として、２３歳のイエリック選手、２４歳のオズナ選手、２５歳のスタントン選手と、優秀な選手が揃っています。イチロー選手はこの３人とレギュラーの座を競うのですが、ここでレギュラーを確保するのは至難の技だと思わざるを得ません。「応援をよろしくお願い致しますとは言わない」と言われてしまっても、応援しない訳には参りません。表面は穏やかに笑みを浮かべながら、徹底的に自分を窮地に追い込み、自らを叱咤激励するイチロー選手、対面する新聞記者と選手の関係は、切磋琢磨するライバル関係にあるというイチロー選手。その挑戦していく姿勢に、心からの応援を続けたいと思います。そして、見事にＭＬＢで安打を重ねて大観衆の拍手を浴びて欲しいと願っています。イチロー選手がこの一年をどのように過ごすか、贔屓の引き倒しにならないように、しっかりと見守りたいと思います。（応援団子Ａ）
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