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東京市全図 (平成26年 2月)

 高校同窓会の打ち合わせが一ツ橋のJ会館であり、地下鉄の神保町で下車しました。開始までには時間の余裕が少しありましたので、かの神田古書店街の魅力に背を向けることができず、立ち寄った一軒の古書店で、中山義秀著「芭蕉庵桃青」という昭和50年11月発刊の文庫本を見つけ購入しました。芭蕉が江戸に出てきて桃青と名乗り、当時の江戸の俳諧師たちと同様に、賑やかな日本橋界隈で暮らしていたのですが、数年後に「三十七歳を期に剃髪して、隅田川の川向うにある深川常磐町に、新たな句境をきり開くべく転居して三年」という辺りから、作者はこの本を展開させています。

 現在の感覚ですと、日本橋界隈から深川周辺までは地下鉄を利用すれば、乗り換え時間を勘案しても、10分、20分という距離にあります。「この程度の距離間隔が、たとえ江戸時代といえども、俳人が句境をきり開く新天地になり得るのかどうか」というのが、率直な応援団子の感想です。「これは当時の環境に近い感覚で、考えないと分らないかな」と思案していたところで、ハッと思い出したのが、以前、永井荷風著の随筆集「日和下駄」を読んだときに、その当時の東京の地理を知りたくて、書店で求めた明治22年初版の「東京市全図」を見ることでした。

 もう20年以上も前のことになりますが、永井荷風著「日和下駄」を読むときに、この地図を傍らに置いて、荷風の訪ねる街々を、まるで荷風と一緒に歩いているつもりで、地図の上に目を走らせた懐かしい思い出があります。この地図は、約80センチ×50センチの大きさの東京市地図で、これを八つ折りに畳み、硬い紙カバーの中に丁寧に入れられたものです。明治22年初刊以後、大正9年10月までに、38回の訂正がなされたとの経緯も記されています。この地図上に芭蕉庵跡という記述がなされていないかと探してみましたが、それはありませんでした。

 芭蕉が新天地とした深川への道をこの地図上で見ると、 隅田川に架かる永代橋を 渡って行くことになりますが、大川と呼ばれていた隅田川に、最初に永代橋が架かけられたのは、五代将軍徳川綱吉の50歳を祝して、 元禄11年(1698年) のことだったと言いますから、芭蕉が40歳の頃にはまだこの橋はなく、おそらく渡し船が通っていたのでしょう。だとすれば、生活環境ということでは、商人で賑わう日本橋界隈と漁師たちの多い深川との隔たりは判るような気がします。今でこそ祭礼には多くの人が集まる深川八幡宮も、この時代には漁師たちの大漁と安寧を祈願する神社であったのでしょう。

 芭蕉からは離れますが、この地図から読み取ることができるのは、大正の世になりますと、東京も市電全盛時代を迎えたということです。地図いっぱいに市内に網羅されている市電網を、赤く太い線で明示しています。その終着駅を、地図の左側から時計方向に追っていきますと、品川駅、目黒駅、恵比寿駅、宮益坂駅、新宿駅、早稲田駅、大塚駅、巣鴨駅、駒込駅、駒込動坂駅、千住大橋駅、南千住駅、柳島駅、錦糸町駅、洲崎駅となります。これとは別に鉄道は、上野停車場から上述の駒込、巣鴨、大塚を経由して埼玉の大宮方面に伸びていますし、山手線、東海道線の線路も追うことができます。

 夏目漱石や正岡子規の著作も、この地図が横に置いて読むと面白いです。例えば、正岡子規が高濱虚子と連れだって散策した道灌山です。子規には「高濱虚子に子規派俳句の後継者になって欲しい」という意図があり、それを道灌山で吐露するのですが、虚子はこれを断り子規は落胆する場となります。根岸の子規庵からその道灌山までの道程を、この地図で見つけました。上述の市電の駅で言うと、駒込動坂駅手前に道灌山下駅があり、音楽学校の横を通って西方に目で追っていくと、そこに「道灌山」と書かれた小さな表示がありました。応援団子はこの地図を暫く離せないでしょう。                               (応援団子A)

 


 

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