日本では昔から「大リーグ」と言ってきたアメリカのプロ野球（ＭＬＢ）ですが、最近はＮＨＫのＢＳ放送で試合の実況中継を観ることが出来ますし、「ＭＬＢ（メジャー・リーグ・ベースボール）ニュース」も毎日放映され、日本から参加しているダルビッシュ投手や黒田投手、イチロー選手や青木選手の活躍もその日のうちに教えてくれます。ＭＬＢ野球中継では、ダルビッシュの三振奪取の記録を楽しみにするのもよし、岩隈投手の活躍を応援するのも面白いですが、今回はその中でも平成１２年以来、１２年の長きに亘ってメジャーリーグの第一戦で活躍してきたイチロー選手にスポットライトを当てたいと思います。
ご案内のように今シーズンのイチロー選手は、ＭＬＢオールスター戦が終わった直後に、これまで所属していたマリナーズからヤンキースに移籍しました。しかもつい昨日までホームグランドであったシアトルのフェンウエイ球場でヤンキースの選手として登場したのですから、シアトルの観客も驚いたことでしょう。テレビでその実況中継を観ましたが、流石はシアトルのファンです。スタンディングオベーションの温かい拍手でイチロー選手の移籍についても認め、いわば敵陣のヤンキースでの活躍を祝福しました。
イチロー選手は平成３年にオリック・スブレーブスに入団しました。当初は、後に振り子打法と言われる身体の重心が前に移動する変則的な打法をコーチ陣は認めず、四年間は二軍と一軍の往復に費やしました。新しいものが世に認められるまでの困難さは、野球も同じです。イチロー選手の打法は四年を経過した後に、仰木監督、新井コーチのアドバイスもあって、前出の振り子打法を完成させ、１シーズン２００安打を超える活躍をしましたが、以降の活躍については多くを申し上げる必要はないでしょう。平成７年からはメジャーリーグに移籍し、１０年間も毎シーズン２００安打を打ち続けてきたという驚異的な記録を残して、今なお活躍中であることはご承知の通りです。
ただ、ここで申し上げたいのはそのことではなくて、選手の寿命といいますか、時の経過はどんな名選手にも過酷な要求を突き付けることを申し上げたいのです。先ずは視力や筋力の低下のことです。勿論、今なお一般的な人間に比べれば強靭な筋力も視力も持ち合わされていることは確実です。現在ヤンキースでのイチロー選手の攻、守、走は、他選手に一歩もひけをとっておりません。ですが、小生にはイチロー選手の眼の光に優しさが見えます。打球の鋭さにも若いときの強さとは別のものを感じます。出場の機会がないとき、ダッグアウトから他選手のプレーを観ているときの落着きもその一つです。流体視力や筋力は、如何に鍛えても、年齢と共に弱化していくことは防げないと思われます。
大記録達成の裏側で、これまで自分の活路を開いていくための苦心は、想像を絶するものであったと思います。そして今も苦心をされている真っ最中であると思います。これからのイチロー選手には、もはや１シーズンに２００安打を打つことよりも、体力の続く限り、一試合でも多く出場してもらうこと、長く活躍をしてもらうことを期待します。イチロー選手の流れるような捕球から送球、盗塁のタイミング、バットコントロール。日本国中のどれだけ多くの人たちが勇気と元気を貰っていることでしょう。これからも毎朝、新聞を手に取ればイチロー選手の名前を探すでしょうし、テレビ放送番組表は必ず見るでしょう。放送のあるときはイチロー選手の勇姿を必ず追いかけます。（Ａ）
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