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昔の人はええこと言うわ (平成20年2月(2))

 老生、「健康こそ宝なり」と考え、寒い中ではありますが、相も変わらず我が家近くの川沿いにあるウオーキング・コースを歩いています。今は大寒が過ぎて、一年中で最も寒さの厳しい時期でありますが、川辺の木々の小枝の先には、その寒さに立ち向かうようにして、もう膨らみ始めている小さな若葉の芽や花の蕾を見つけることができます。そしてこんなときには、現役時代から何度も手に取った「菜根譚」という本の中の117項にある「衰颯の景象は就(すなわ)ち盛満の中に在り、発生の機緘(きかん)は即ち零落のうちに在り」という一節を思い浮かべ、元気を出して歩いています。

 この一節は、何も寒さに耐えて伸びようとしている若葉の芽や花の蕾の為にだけ言われているのではなく、むしろ苦しく厳しい仕事に挑戦している若者に当てはめられるべきものだと思います。意味するところを簡単に言えば、「崩壊や衰退していく兆しは、人気絶頂で最も盛んに活発に事業を進めているときに蔓延し始めるのであり、その逆で、状況が一番辛い、厳しいときにこそ、新しい事業発展の芽が育ち始めているのだ」という勇気を貰える一節なのです。

 そう言えばこの間、Tさんへの手紙の挨拶に「発生の機緘は零落のうちに在りです。もうすぐ春が近いですね。」と書いたら、Tさんから「それは菜根譚からの抜粋でしょう。機緘について同書には他に次のような一節もあります。」という返事をいただきました。それは同書68項にある「天の機緘は測られず。抑えて伸べ、伸べて抑う、皆これ英雄を播弄し、豪傑を顛倒するの処なり。」という一節のことを言われたのでした。

 ここにある「機緘」という熟語は、日本語の辞書には記載がありませんが、同書の訳語では「変化のからくり」とあります。漢和辞典によると、「緘」には「閉じ込める、秘める」という意味があり、「機」は「はたらき」という意味ですから、「働きの中に秘められているもの」つまり「変化のからくり」と訳されたのでしょう。要するに「天(神)の働きの中に秘められているものは、人間が測ることは出来ない。人が抑えようとしたら伸び、伸びようとしたら抑えてしまう。これでは英雄も豪傑も自由自在に天に操られているだけ」という意味に解釈できるでしょうか。

・・・読者の皆様、誠に恐れ入ります。「何を面倒な説明をしているのか」と思われるでしょうが、もう少し我慢して読んでいただきたいのです・・・。

 Tさんが指摘されたこの68項の結論を意訳しますと、「だから智恵ある人間は、天の与える逆境と思えるものも順境として受け止め、平穏無事の日から危急のときに対処する準備を心がけなければならない」とあり、「仕事も生活も、平素の心がけが大切なんだぞ」との忠告であると思います。そして、老生が掲げた117項の結論の方は、「無事平安なときには本心を堅く守り通して、他日の艱難に備えるべきであり、また困難な日々が続くときには、あらゆる忍耐を重ねて、いずれ訪れるであろう目的達成の日を願ってコツコツと努力すべきである」(筆者の意訳あり)と記されています。

 確かに順調な日々にあっては、人間はぼんやりと過ごすか、有頂天になってしまうことが多く、なかなか「危機を想定して十分な備えを怠らず」とは参りません。そして逆境の日々が続くと弱音を吐いて愚痴をこぼし、人のせいにしてぼやいているのではないでしょうか。少し悲しいですが、これが人間の性(さが)です。

 表題を「昔の人はええこと言うわ」などと、少しおどけて書きましたが、古人は経験の中から素晴らしい至言を我らに遺してくれています。「菜根譚」の中には素晴らしい至言が幾つもあります。ですが、頭で理解しているだけでは身についたことにはなりません。行動に移して成果を得てこそ「理解した」といえるのではないでしょうか。

 例えば上述に「我慢に我慢を重ねて努力する」と訳した部分の原文は「まさに百忍を堅くして以て成るを図るべし」というものです。「百忍」とは実に困難なことではないでしょうか。なかなか実行できるものではありません。こういう言葉を噛みしめながら、寒さくらい少し我慢して、静かに古人の至言に耳を澄ますこと。自らを戒め、励まし、学んだことを明日の糧にするのも好いことではないでしょうか。是非とも本書を手に・・・。(A)


[参考文献] 今井宇三郎訳注「菜根譚」(岩波文庫 1988年4月 第22刷発行)

(註)1.菜根譚は明の末代(1600年代初頭)に生きた洪自誠の著作によるもの
     ですが、洪自誠に関する確かな史料はないようです。日本に菜根譚が渡来
     したのは江戸時代の初期といわれています。
   2.菜根譚は「人よく菜根を咬(か)みえば、則ち百事なすべし」(硬くて筋の多
     い菜根をよく噛んで味わうことの出来るのは、ものごとの真の味を味わう
     ことの出来る人です)という由来を持っています。
   3.菜根譚は前集222項、後集135項、合計357項からなる至言集と言
     えるでしょう。前集が主として社会における人の交際についての記述が多
     く、後集は主に山林自然の趣や隠遁閑居の楽しみを記述しているものです。

 ◎ 68項の全文
   『天の機緘(きかん)は則(はか)られず。抑(おさ)えて伸(の)べ、伸べて抑う、
   皆これ英雄を播弄(はんろう)し、豪傑を顛倒(てんとう)するの処なり。君子は
   只是れ逆に来たれば順に受け、安きに居りて危きを思う、天もまたその技倆
   (ぎりょう)を用(もち)うるところなし。』

  ◎ 117項の全文
   『衰颯の景象は、就(すなわ)ち盛満の中に在り、発生の機緘(きかん)は、即
   ち零落の内に在り。故に君子は安きに居りては、宜しく一心を操(と)りて以
   て患(かん)を慮(おもんばか)るべく、変に処しては、当(まさ)に百忍(ひゃく
   にん)を堅くして以て成るを図るべし。』
 

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