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いただいたカレンダーから (平成19年12月(3))

 我が家の居間には、今春、富山に旅した思い出とも言うべきA1サイズの大きなカレンダーが貼ってあります。カレンダーには「越の国から(万葉の花暦)」との表題がついていて、しかも普通のカレンダーなら一月から始まり十二月で締めくくられるものですが、このカレンダーは四月から始まって、来年の三月まで使える年度表示のカレンダーなのです。そして越の国にゆかりのある万葉歌が並び、歌われたその季節の花々や景色の写真がデザインされたものです。

 この四月に谷川社長ご夫妻にご案内していただいて高岡市の瑞龍寺、高岡観音、山町筋から金屋町を歩きました。そのときガイドをして下さった杉山様(「気ままにご挨拶」バックナンバー〈5−1〉をご覧下さい)が、旅行の後で谷川社長に「お使い下さい」と、ことづけて下さったカレンダーで、谷川社長が送ってくれて我が家に届いたその日から、今の位置を占めています。今回はこのカレンダーにある万葉歌の中から、二つを選んで「気ままにご挨拶」にしたいと考えます。

 その一つ目は、カレンダーの最上段を飾る大きな「たぶの木」の写真と、大伴家持の「都万麻」と表題された歌です。

   磯の上の つままを見れば 根をはえて 
             年深からし 神さびにけり(巻十九 四一五九)

 前々回も話しました池田弥三郎著「魚津だより」の十一番目のエッセー「たぶ・つまま」の中に、この歌は採り上げられています。以下は同書に書かれた池田弥三郎さんの解説の概要です。
 『「つまま」は漢字で「都万麻」と書き、辞書には「たぶの木」の古代の言い方で
 あると記されているが、その背景が未だよく解らない。わが師匠折口信夫の「ゆい
 の団結心」と「たぶの木」と共に、大陸から渡来してこの地区に棲みついた古代人
 の心の拠りどころと見るロマンチックな発想に感銘したけれど、でも魚津に来てか
 ら調べた結果、それはご破算にしなければならなくなった。「たぶの木」は、植物
 学者によれば「もともと日本に群生していた木である」と』

 いずれにしましてもこの歌の意味するところは、「磯の上に幾年もの風雪に耐えて、しっかりと根をおろした古い一本のたぶの木、その堂々たる姿に神々しさを感じている」という家持が古木を通して感じた生命力の力強さを述べたものだと思われます。これは余談になりますが、上述の「魚津だより」には、「磯の上の」とあるところから、「雨晴海岸の女岩に生える木が大伴家持の見た木ではないか」という説のあることも言われていますが、これはどうやら「よの木」というもので「違うだろう」という解説でした。

 もう一つの歌は、カレンダーの最下段にある、やはりこれも大伴家持の新年を寿ぐ歌ですが、次のようなものです。なお大伴家持は、万葉集の巻二十の最終を飾る歌としても別の新年を寿ぐ歌を遺しています。

  新(あらた)しき 年の初めは 称年(いやとし)に
            雪踏み平(なら)し 常かくにもが(巻十九 四二二九)

 この歌の意味は、「新年を迎えて今日も積もる雪を踏んで出勤してきたが、毎年こうしてみんなが元気に集まって新年の宴を催したいものだ」というものでしょう。新年に雪が降り積もることをこの時代は吉運と見たようですが、小生には「雪が積もれば踏み平(な)らし、平穏なる日々を暮らす」という歌の裏側に、家持の国を治める政治(まつりごと)に対しても、一つひとつの行事を確実に執り行っていこうとする祈りの心が籠められているように思えてなりません。

 考えてみれば、私たちの生活は仕事をこなしていくことで充実していきます。仕事とは問題解決をすることにほかなりませんが、問題解決には「したたかさ」も「しなやかさ」も要求されます。家持が考えたように、仕事も一つひとつ「積もる雪を踏み固め、踏み平(な)らしていく」ように、確実にクリアしていくことが大切でしょう。新年を迎え心機一転をはかることには大賛成ですし、カレンダーを新しく取り替えることも気分一新に役立つかも知れません。ですが、仕事も人間関係も年を越して継続していきます。この越の国のカレンダーのように「12月の次は1月」と連続していることを忘れてはなりません。

 万葉時代、自然環境の厳しい富山で人々が生きていくことは並大抵のことではなかった筈です。小生には、風雪に耐えて力強く長寿を保つ古木と、初雪を踏み平(な)らして勤めに向かう家持の姿が重なって見えてきます。こうした環境から人が培ってきた「結(ゆ)い」という組織の団結心を大切にして、人が、村が、街が、都市が、企業が、これまで歴史を作ってきたのでしょう。これからも「共生の智恵」によって、人も村も街も企業も永く繁栄していくことを願うものです。 杉山様からいただいたカレン ダーを見ながらそんなことを考えました。

 末筆ではありますが、読者の皆様の年末年始における益々のご健勝を心からお祈り申し上げます。良いお年をお迎え下さい。(A)

 註 折口信夫に帯同して池田弥三郎が最初に富山を旅したのが昭和12年というこ
   とです。 そのときには七尾に越える峠に枝を張った見事な一本のたぶの木が
   あったと著書には書かれています。ただ、昭和56年、魚津に赴任した時点で
   はこれを見てはいないようで、折口信夫が著書「古代研究」で使った写真は
   「魚津だより」に掲載されています。このたぶの木は、現在まだ健在なのかど
   うか。
   また、高岡市の勝興寺の「都万麻」と書かれた「たぶの木」の写真が、同書に
   は掲載されていますが、勝興寺のホームページには特別な記載がありません。
   でも一度は訪ねてみたいですね。
 

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