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秋の夕焼け(平成18年10月)

 空にたなびく雲がいよいよ赤く染まり、辺りのすべてが夕映えに照らされる秋の夕刻には、何処からともなく「夕焼け小焼け」のメロディが聞こえてくるような気がして、思わず歌いだしているひとときがあります。もう八十年以上も前から日本人の愛唱歌になっていますし、私たちはもの心がついた時から自然に覚えている歌ではないでしょうか。皆様は「夕焼け小焼け」を口ずさみながら、故郷を想い、その頃の幼友達を思い、暮れなずむ赤い空を見てセンチメンタルになることはないですか。

 「夕焼け小焼けで 日が暮れて 山のお寺の鐘がなる。
  お手々つないで 皆帰ろう 烏と一緒に帰りましょう。」

 「子供が帰った 後からは 丸い大きなお月様。
  小鳥が夢を見る頃は 空にはキラキラ金の星。」

 この「夕焼け小焼け」は、中村雨紅(1897〜1972)の詩に、草川信(1893〜1948)が曲をつけたもので、作詞もさることながら作曲が素晴らしいのだと言いますが、私たちはそれぞれにこの歌には思い出があり、メロディがよいからとか、作詞がよいからと分けて考えることはないでしょう。余談ですが、この歌を作曲した草川 信は長野県出身で、「夕焼け小焼け」のメロディを思いついたときの様子を次のように言っています。「幼い頃の善光寺や阿弥陀堂の鐘が耳の底に鳴っていて、山国の夕暮れは静かで美しくもありました。中村さんの詩を見て、まるで口笛でも吹くように自然にメロディは出来てしまいました」と。

 中村雨紅は、本名を高井宮吉といい、八王子の恩方村の神社で生まれたそうです。14歳で上京(当時の八王子といえば東京から見れば片田舎でした)し、青山師範学校に入学しました。卒業後19歳で第二日暮里小学校に奉職します。当時、奉職先の日暮里に住む子供達は貧しかったようです。「おもらい」と称し、葬儀のあとのお供え物や食べ物を、子供達が授業を抜け出して貰いに行っても、先生方は黙認をしていたということです。高井先生は熱心に子供たちを指導し、また子供たちからも慕われたことが資料には書かれています。

 また、資料には興味深いことも記載されていました。それは夕焼け小焼けの原詩とでもいうもので、現在の歌詞になるまでに、何度も何度も推敲されたのでしょう。最終的には前出の歌詞になったのでしょうが、元はこうだったようです。

 「夕焼け小焼けで日が暮れて 山のお寺の鐘が鳴り
  小鳥は森へ皆帰る 子供も急いで皆帰る」

 「子供が帰ると後からは 圓い大きな月が出る
  小鳥が夢を見る頃に 空には金星銀の星」 

 高井先生こと中村雨紅が童謡や童話作りに熱中した大正時代は、日本中で童謡童話の名作が生まれた時代でした。「城ヶ島の雨」などで有名な野口雨情は、当時のスター的存在でした。雨紅という名前は「雨に染まりたい」、つまり一歩でも野口雨情に近づきたいという思いでつけたのだそうです。

 高井先生こと雨紅は、同じ教員の本城千代子と職場結婚をします。千代子は教育熱心で厳格な教師であり、雨紅はロマンチストである反面、苦手な学科は他の先生にお願いするといった、おおまかなところがあったようで、千代子のようなしっかり者のタイプには強く惹かれたのでしょうね。その雨紅先生の「若かりし日」という詩集の中に、千代子夫人を恋慕する気持ちが書かせたような詩が残っています。恋する人のやるせなさが満杯の甘い詩です。
 
 「今、私は眺めていますのよ 
  あなたの好きだとおっしゃった 
  そして私の好きな十三夜の月を 
  たまらなく あなたが恋しくなりました」

如何でしょうか。現代ではこうした詩にお目にかかることはありませんが、雨紅先生が若かりし日に、千代子夫人から「一度でもいいからこんな手紙を貰ってみたい」との思いが高じての作品のように思われます。あるいは千代子夫人からの手紙が参考になったのかも知れませんね。秋の夕焼けの中で、どうやら何十年も前の大正ロマンの空間に迷い込んでしまったようです。(A)

 

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