午後の陽射しが柔らかい。この時期なら、もう少しは寒さを感じてもよさそうなものなのに、久し振りに降り立った幕張は暖かく爽やかだった。母校の先生から「吹奏楽のコンテストに出場しているから、励ましに行ってやって欲しい」と、チケットを送っていただいた。仲間と連れ立って来た幕張イベントホールは観衆で満杯だった。気軽に出かけてきたことが恥ずかしかった。第17回全日本マーチングコンテスト(高校以上の部)に出場する学校は、母校を含めて「パレードコンテストの部」に選ばれた14校と、「フェスティバルの部」に選ばれた10校が日頃の練習の成果を披露した。どの学校も50人を越える生徒達が、自ら演奏する曲目に合わせて広いフロアーコートの中を、右に左に一糸乱れず踊るというか、行進するというのか、その見事さに絶句してしまった。
北陸地区からは富山商業高校が代表として選ばれ出場していた。生徒達は「おわら風の盆」の菅笠をかぶり、踊るように行進し演奏した。いつか訪れた八尾の夜のおわら節を思い出していた。各校に与えられている時間は6分間、この短い時間の中で、生徒達は演奏し、行進し、一年間の練習の成果を、これみよとばかりに表現した。その度に大きなイベントホールは演奏される楽曲で響き渡り、整然とした生徒達の動きに圧倒され、その迫力に観衆は酔いしれた。
高等学校には野球といい、サッカーといい、バレーボールといい青春を謳歌する部活動は幾つもあるだろうが、スポーツ活動とはいささか異種の、一線をひいたマーチング活動を初めて観覧席からみて、生徒達の見事なチームプレー、チームワークからスポーツと全く同種の感動が伝わってきた。演奏をしている間にも、使った楽器を、あるいは旗手たちの使った旗を、手のすいた者が手際よく次々と片付けていく。出場したどの学校の生徒達にも心からの拍手を送りたい。諸君は、甲子園や国立競技場でプレーする選手達に変わらない素晴らしいスターである。
コンテストの結果発表もされていたが、それはもうどうでもよいように思った。イベントホールからの帰途、前を歩く人の足を踏まないように気をつけて歩いたが、空にある満月にはまだ遠い月を眺めながら、晩秋の宵の冷たさが心地よかった。(A)
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