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【 第七回 】 「ハーバード白熱日本史教室」

 八月の俳句サロンで句会が始まる前に、仲間のMさんが、Dさんから本を受け取りながら「どうでしたか。面白かったですか」と言われ、Dさんが「いやぁ面白かったです。Mさんはどこでこの本のことを知られたのですか。何かに広告が出ていたのですか。」と質問されていた。この話をそばで聞いていた応援団子に、突然「Aさんは読まれたか」と水を向けられた。その本が上述の北川智子著「ハーバード白熱日本史教室」である。言うまでもなく読んでいなかったので、「いいえ」と答えたら、Mさんは優しい笑顔で「是非読んでみて下さい」と応援団子にこの本を渡された。

 この本は著者である北川智子が、カナダのブリティッシュ・コロンビァ州立大学の数学科を卒業する前に、日本語が読めるというだけで、日本史専任の教授のもとでアルバイトをしていたことから始まる。教授のリサーチを手伝うということで、読んでいた本が豊臣秀吉のことを書いたお坊さんの日記であった。その日記への不満というか、疑念を教授に話したところ、「大学院で日本史を勉強しないか」と誘われた。理系の数学から文系の日本史へという大転身は、著者の勇気ある行動も凄いが、この難業が教授の熱烈な推薦状もあって、見事に成就したというから面白い。

 そして 日本史の院生として大学院に通い始めた夏に、 ハーバード大学のサマースクールに行こうと思い立った。若い頃にはよくある「ブランドに憧れる」という気持ちが強かったと書いているが、これが後に彼女の職場となる名門ハーバード大学との運命的な出会いとなった。ここで受講した「短期特講・日本史概論ザ・サムライ」によって、彼女の日本史への疑念が、おぼろげながらその輪郭を浮かび上がらせ、歴史を学んでいく上での彼女自身の進路が見え始めたのだと思う。それは「日本史では、膨大な“ザ・サムライ”の歴史があるのに、何故“Lady Samurai”の歴史はないのか」ということだった。

 この先、 2004年から2012年までのスリリングな物語は、 是非とも本著を読んでいただきたい。彼女の努力と運命の女神の導きが、申し上げたようにハーバード大学教授として教壇に立つところまで運んでいくのだが、その辺りを示す著作の中の一部分をここに抜粋したい。しかもこの部分は彼女自身の歴史観を述べている部分でもあると思う。教授としての二年目、受講生が増大してきた中で「Lady Samurai」の講義を始めるに至った実情説明を始める。しかもそれは講義の途中で、「休憩」と言って話し始めたのである。

  『(略)。私が彼らの年齢だった時のハーバードの日本史クラスの話。そして、
 そこからどういう経緯で「Lady Samurai」などという博士論文を書くことになり、
 このクラスを教えることになったのか、簡単に説明した。休憩の脱線話を、学生た
 ちは真剣に聞き入った。
  しかし、先生としては脱線しっぱなしでは困るので、「こんなふうに、出来事と
 出来事がつながりあって、新しいアイディアが生まれるんだよ」と付け加えた。
 つまり思いがけないところに始まりがあって、 歴史はそんなふうに変わっていく
 んだ、と。
  私がこのハーバード大学で、「ザ・サムライ」のクラスを受講したことで、今こ
 うして「Lady Samurai」というクラスが出来た。そして今、80人あまりがこのク
 ラスで勉強しようとここに集まっている。弱小東アジア学部のクラスに80人が。
 そんな出来事のつながりが、また新しい歴史を作るんだよ、と。
  緊張は次第に一体感に変わった。学生は「ザ・サムライ」の脱線話から、瞬時に
 して私の歴史観を体得していた。・・・(略)』

 歴史という学問は、何故を問い続ける学問であり、古い時代の話が現在に繋がっていることを実証していく学問であると応援団子は思っているが、北川博士は学生たちに自分の具体的な履歴を披露することによってそれを提示したのである。さらに著作の中の他の個所でも「歴史がみんなを強くする二つの理由」として、極めて具体的に歴史を学ぶ道標を示しているので、ここに写しておきたい。

 (その一)「時に隠された意味を見つけること」
 どんな古い時代の出来事であっても、その事実の持つ意味が見つかった瞬間から、
 現在と直接関係を持つようになるということである。だから、歴史を勉強すると
 いうことは、みんながここで「時の秘密」を探り、意味を見つけよう。
 (その二)「時の重力を感じること」
 時間はいつも同じペースで進んでいる。しかもそれは様々な意味を持って進む。
 辛いときも嬉しいときも同じ重力であり、昨日が今日より駄目な理由はどこにも
 ない。 我らが暮らしの一分一秒、時の重力には変わりがないことを忘れないで
 欲しい。

 歴史を好む応援団子としては、これまで読んできた歴史学者の示す歴史概念と、北川博士の違いは、どこにあるのかを考えてみた。一番の相違は「具体的に述べる」ということだと思う。とかく学問というのは「学術的に述べる」あるいは「述べられた」
ものを有難がる習癖があると思われる。本著における北川博士の書法は、単に一般読者のためということで「分り易く」書いたとは思えない。「伝わること」を主眼においていること。つまり「伝わらなければ意味がない」ことを明確にしているのだと思う。

 北川博士はご自身の歴史学を「印象派歴史学」といい、全体のインプレッションに拘った「印象派の歴史叙述」を目指しておられるが、それとは別な角度で、学生たちには個性と感性を求め、オリジナリティを尊重させつつも、グループ・ワークを課す一面も忘れない。彼女の学生、インターン時代に経験した社会の現実、つまり社会には厳しいルールも負うべき責任があることを、グループ活動を通じて習得させるのである。「他人と力を合わせて一つのことを仕上げること」、「他人と自分の両方を信じること」など、社会で役立つ学問でなければならないことを学生たちに叩き込んでいるのである。

 例示される授業風景では、学生たちは喜んでこれを受け入れていることがよく判る。
授業の人気は、その講義に集まる学生の数に比例するのは当然である。他の教授が驚くほど学生を集めている。応援団子は北川博士の「Lady samurai」の講義や教授が担当しているもう一つの講義「KYOTO」については全く紹介しなかったが、 豊臣秀吉の
正妻「北政所ねい」が「Lady samurai」の一人であることなどが本著の中には書かれている。何度も言うようだけど本著を是非とも読んでいただきたいと思う。

 このほか、学生たちが人気投票のように決める「ベストドレッサー」賞や「思い出に残る教授」賞に北川博士は選ばれていることが書かれている。当の本人が書くのは些か照れると思われるが、「思い出に残る教授」賞に選ばれた教授が、学生たちに言葉を残す「しきたり」があり、北川博士も次の言葉を学生たちに書き残したという。それを擱筆の言葉とする。

  “No proof needed;your possibilities are ∞.
   「証明などいらない。貴方の可能性は無限大」

(応援団子A)


 *採り上げた著作
  北川智子著「ハーバード白熱日本史教室」(新潮新書) 680円(税別)



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