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第27回

◎ 「新日本様式」議会のこと

 今年早々に『「新日本様式(ジャパネスク・モダン)」協議会』(理事長は松下電器産業株式会社中村社長)という「これからの日本のものつくり」を推進していく団体が出来ていたことを読売新聞の広告で知った。興味を覚えて早速パソコンのポータルサイトで『「新日本様式」協議会』を検索してみた。列挙されている幾つかの記事をクリックして、発足に至る経緯から平成19年末までのラフ・スケジュールを見て大体のところを知ることが出来た。是非ともこれが、我が国の「ものつくり人(びと)」の基地になるように、参加する企業や団体が協力して本協議会を育てて欲しいと思う。冒頭に記事の中から設立趣意書などの一部を紹介し、考えるところを述べてみたい。

(設立趣意書からの抜書き)
 『グローバリゼーションの進展に伴い、国際競争力の強化が求められる今日、更なる付加価値の源泉として、日本ブランドの確立が求められています。我が国固有の文化、技術、心などを要素とした素晴らしさ=「日本ブランドの有する価値」を向上させ、世界に発信していくことが、我が国の製品やコンテンツの国際競争力の強化につながると考えます。』

 『我が国の伝統的な技術・デザインや機能、コンテンツを現代の生活にふさわしいよう再提言すること。我が国の伝統文化や伝統技術に着目し、日本人が永年培ってきた感性の結晶として、新しい日本様式を確立させようという試みです。』

 『「新日本様式」ブランドの概念を広く国内はもとよりアジアそして全世界にアピールし、我が国の国際競争力を高め、さらに、今後継続的に「新日本様式」に関する製品やコンテンツが生み出される文化、技術、人材等の交流の場を創出し、当該製品やコンテンツのビジネス化まで視野に入れたダイナミックな活動の展開を支援し、我が国経済全体に波及的な効果を及ぼすことを目指します。』

 本協議会発足の背景を経済産業省の記事から推察すると、昨年5月、同省商務情報局サービス政策課で準備が始まり、日本経済界を取り巻くグローバリゼーションの進展、とりわけ中国、韓国の追い上げによって、東アジアにおける国際競争力の高まりを意識せざるを得ず、こうした背景下で我が国が勝ち残っていくためには、「ものつくり」のレベルを「量から質」への転換という通常的なモデルの追求に留めず、「質から品位へ」と一段とバーを高くし、日本ならではの付加価値を、製品やコンテンツの中に練り込むことで、日本経済の優位かつ安定的な位置を得ることを狙いとしている。つまり「ものつくり日本」のあるべき姿や期待される目標を再考し、その具現化を目指そうということである。

 今から思えば1970年代から80年代に、「ものつくり」に励んだ我が国の「働き人(はたらきびと)」は、世界の企業と争って技術、品質のレベルの高さを誇り、購入し易い価格への配慮も怠らなかった。何にもまして生産性の向上に努力、切磋琢磨した「働き人」の勤勉性は、NHK番組の「プロジェクトX」やテレビ東京の「ガイヤの夜明け」などで紹介されてきたように、世界から評価される幾つかの最高レベル商品の開発をして来た。しかし、その勝ち得た経済発展が人件費の高騰を呼び、これを吸収するべく生産の拠点を海外に移さざるを得なくなった時期が到来し、「ものつくりの心」が次第に揺らぎ始め、金融業界の心の荒廃と相俟って、日本経済は坂道を転げ落ちていった。

 額に汗して努力しても報われないと迷いが生じたとき、働き人(はたらきびと)の心の荒廃は始まる。やがて組織規範が弛緩してくる。現実は「世の流れの変化、価値観の変化」を人々は口にし、方向不明、右往左往の中で自らの存在感を見失った。「赤信号みんなで渡れば恐くない」的無責任な意識が蔓延し、働き人は困難を克服する忍耐も、仕事を成功させる感動も、精緻で強靭な技術も、気配りも、良質のものを思考外に置いた。気がつけば、拝金至上主義、市場原理至上主義の台頭を許していて、会社や働き人に「勝ち組」、「負け組」というレッテルを安直に貼りつけ、「勝ち組」のみを優先し、損得だけの話が横行する社会になっていた。余分のことになるが、これが若者の「働く夢」を奪い、働く気力を冷め切らせている元にはなっていないか。

 本協議会名が単に「日本様式」でもよかったと思うのに、改めて「新日本様式」とした理由の一つには、上述に対する反省もあると思うし、企画者たちの「新」の文字に込めた思いは、また、日本古来の伝承芸術、文化をレビューし、それも全くの昔帰りを望んでいるのではなく、現代形での取入れを熟考しなければならないというのであろう。「グローバル化」という一種流行的な現象に惑わされる昨今、これを再考し、しかし「明治維新の時のように、日本固有の良質の芸術、文化を粗末にした同じ過ちは決して犯さない」との思いも強くあるだろう。さらに、ここ二、三十年のうちに喪失してきた日本的な「心」の復活を切望していること、これである。「武士道」(新渡戸稲造著)がここ数年、書店の棚に平積みの状況にあるのは、日本人の多くもそれを望んでいるのだと思う。

 とはいえ、本協議会が順風満帆のまま簡単に目的地に到達できるものとは思はない。参加企業、団体の積極的かつ具体的な参画意識や、あるいは献身的な協調、協働も必要であろう。マスコミを通した社会への盛り上げも必要であると思う。当初計画としては、来年までに展開する「新日本様式100選の選出」やカタログの作成、リーダーの育成や開催イベントのマップつくりなどが、おおよそ決まっているようであるが、その一つひとつを成功させてもらいたいと思う。

 締めくくりに応援団子は、「日本のものつくり人」が決して忘れてはならない「日本の美や心」につながると思われるものを、宮本武蔵が著した「五輪書」、「地之巻」の中から紹介したい。ご案内のとおり「五輪書」は、兵法の書である。「地之巻」には兵法の総括が記述されているが、武蔵は兵法の道をここではわかり易く大工仕事にたとえた。「大工の統領」と書いてあるのを「社長」とか「プロジェクトのリーダー」と読み替え、「家」と書いてあるのを「会社」と読み替えれば、読者に響いてくる感慨が一層明確になると思う。ただここでは、原文は岩波文庫や講談社学術文庫などで読んでもらうことにして、意訳のみを記述しておきたい。

 [意訳の作成は、上述の鎌田茂雄著「五輪書」(講談社学術文庫)を参考にした。また「五輪書」は、宮本武蔵六十歳、寛永二十年(1643年)の作と聞く。]
 (意訳)
 『兵法の道を大工にたとえると、大将は大工の統領と思えばよく、統領の道を貫くためには、天下の尺度をわきまえ、国の尺度を糾(ただ)し、家の尺度を知らなければならない。大工の統領は、堂、塔、伽藍(がらん)の尺度を覚え、宮殿、楼閣の図面を知り、人々を使って建物を建てる。それは大工の統領も武士の統領も同じことである。   

 家を建てるには「木くばり」をしなければならない。真っ直ぐで節もなく、見掛けのよい材木は、表の柱とし、少しは節があっても、真っ直ぐで強いのは裏の柱とする。たとえ少しは弱くても節がなく見栄えがよいものは、敷居、鴨居、戸、障子と、それぞれの性質に合わせて使い、節があっても、ゆがんでいても、強い木材は、その家のそれぞれ強度を見極めて、よく吟味しながら使えば、その家は長持ちする家になる。・・(略)

 統領が大工を使うにあたっては、腕前の上、中、下を知り、床廻り、あるいは戸、障子、あるいは敷居、鴨居、天井というように、それぞれの腕前に応じて使う。腕の悪い者には根太(ねぶた)を張らせ、もっと悪い者にはくさびを削らせるなど、人をよく見分けて使えば仕事の能率があがって手際よくいくものである。
  
 仕事の能率が良く、手際がよいということ。四方に気を配ること。肝心な所を押さえること。気力にむらのあることを知り、勢いをつける方法をはずさないこと。無理なところは承知していること。こんなことが統領の心得ておくことであり、兵法もまたこのようなものである。』

 『士卒たる者は大工そのものである。自ら道具を研ぎ、いろいろな道具の準備をして、大工箱に用意しておく。統領のいいつけを聞いて、柱や梁(はり)を手斧で削り、床や棚はかんなで削り、透かしもの、彫りものなどもこなし、寸法を正しく、手のかかるこまごましたところもキチンと仕上げるのが大工の仕事である。技は自らが仕事を通して磨き、キチンと寸法を合わせて収めていれば、やがて統領になれるのである。

 大工のたしなみは、良く切れる道具を揃え、ひまを見つけては、これを研ぐことが肝心である。その道具を使って、厨子(ずし)、書棚、机や行灯(あんどん)、まな板や鍋のふたまでも、上手くつくり上げるのが、大工の大工たる由縁である。士卒もまたこのような心がけが大切である。よくよく考えなければならない。

 さらにまた、大工のたしなみとして、仕事がゆがまないこと、留めをキチンと合わせること、かんなでよく削ること、すり磨かないこと(「隅がキチンと合っていないものを無理にすり磨いて誤魔化さない」の意があると解釈する)、後になってゆがまないことも肝心なことである。兵法を学ぼうと思うなら、ここに書き記した一つひとつに、念を入れて熟考検証し、自分のものにしていかねばならない』

 如何であろうか。武蔵は大工も兵法も同じというが、こうした努力や日頃の鍛錬は、「ものつくり人」だけでなく「ものあつかい人」を含めた「すべての働き人」に通ずる話であろう。「心を込めて道具を研ぎ、道具を大切にする」、「留めをキチンとすること、仕事がゆがまないこと、後になってもゆがまないこと」という働き人の心の内側で働く「四方への気配り」や「完成までの執念、忍耐」は、いつの時代にも必要不可欠なことである。「新日本様式」協議会はその役割を担おうとしているのである。

 宮本武蔵は同著の別のところで、「心意(しんい)二つの心をみがき、観見(かんけん)二つの眼を研ぎ、少しもくもりなく、まよいの雲の晴れたるところこそ、実の空としるべき也。」と言っている。世間には、いわゆる世長けた物言いで実情をくもらせる者もなきにしもあらず。思わぬ否定的な要素を探り出して妨害を入れ、前をふさいで進めなくなることがないとは言えない。こんな時、是非とも宮本武蔵の言うところの再吟味をしていただければと願う。

 終わりに余談を一つ。現在までの同協議会への主な参加企業は、理事長会社の松下電器産業(株)を始めとして、アサヒビール(株)、(株)資生堂、セイコー(株)、トヨタ自動車(株)、 日本電気(株)、(株)博報堂、三井物産(株)、(株)日立製作所、富士通(株)、キャノン(株)、三協アルミニウム工業(株)、関西テレビ放送(株)、キャノン(株)、コクヨ(株)、東レ(株)サントリー(株)などがあり、団体、学校、個人を加えればすでに95会員を数える。
(応援団子A)

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