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第1回

◎司馬遼太郎著 「翔ぶが如く」(文芸春秋社)第1巻「好転」の章から抜粋

""  『人間の相克は利害にもよる。しかし尺寸にもよる。人間の不幸は、人によって尺度の大小が異なっていることである。
 この平凡な事実が、人間と人間との関係に誤解を生み、軋轢を生じせしめ、無数の悲劇や喜劇を歴史の中に生み、時には歴史を変動させてきた。日常のレベルではなおさらのことである。人間は人間との関係においてのみ生存できる動物であるかぎり、この課題は人間が共通に負っている業という点で不動のものにちがいない。』
 司馬遼太郎さんが、西郷隆盛の人物尺度について触れる前提として普遍的な事実を書かれたものである。

西郷隆盛が残している次の発言――「世間では自分のことを戦好きというそうだ。誰が戦を好むものか。
戦は人を殺し、金を使うもので、容易に戦をしてはならぬ」――を採り上げて、この言葉があるにもかかわらず、「西郷隆盛の征韓論」として世の中には「戦好きの隆盛」のイメージが世にはびこったことに注目した。

 西郷隆盛にはまた、次のような言葉がある。「西洋は文明国だという。しかし自分は野蛮国であると思っている。かれらは弱小の国をいじめ、侵略している。本当の文明とは、未開の国に対しては慈愛を本とし、
懇々説諭して開明に導くべきである」と。思えば西郷隆盛は、錦の御旗のもと、官軍の江戸入城のときに、勝海舟との談判で「無血開城」に応じた人である。「侮日外交をやめようとしない朝鮮を武力討伐しようというのではなく、懇々説諭して開明に導く」旨の外交手段を考慮していたことは充分に説得力のある話だと思う。ところが「武力討伐」が「征韓論」であると信じられ、その親玉が西郷隆盛と思われたと司馬さんは切々と弁じておられる。

 上述の言葉があるにもかかわらず、西郷隆盛は「戦の一字を忘れるな」と、周囲に言い放ったこともある。
そのことばの真意は、「国が陵辱されるにおいては、たとえ国も人も斃れるといえども、正道を践(ふ)み、義を尽くすのが政府の本務である」、それを犯されるときは、「戦いの一字を忘れるな」ということであり、真意の伝わらないこの辺りの状況を指摘して司馬さんは、「西郷さんは、この時代、日本で哲学を持っていた最初の政治家であった」と評し、同時にそのことが、「彼がこの国に生まれたことの不幸にもなっている」とも付け加えている。

 人間は、存在する数だけ異質の考えを持って生きている。人に自分の考えを伝えるということが難しいのはそのためである。人に面と向かって話をした紛れもない事実や考えでも、尺寸の異なる考えを持つ人の口を介して伝わっていく間に変化をしていく。その良し悪しはともかく、「話は正しく伝わらないこと」を覚悟し、これを前提にした対応を忘れてはなるまい。伝わっていく時間差と、人が介在して飾りつけられていく虚偽、虚像を考慮しながら、下腹に重心をおいた言動こそが大切であると思われる。それでもなお西郷隆盛のような悲劇は起こり得ること、まさに司馬さんが言われるように、人間に負わされている「業」としか言いようのない事態は起こるのである。(応援団A)

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